浜田高校に設けられた特別支援教育の執務室で準備に当たる教職員=浜田市黒川町
浜田高校に設けられた特別支援教育の執務室で準備に当たる教職員=浜田市黒川町

 島根県内で特別支援教育が変わろうとしている。従来は中学校までだった「通級指導」を県立高校でも導入し、「切れ目なく」生徒を支援するという。鍵を握る教員や周囲の生徒によるフォローを、どう進めようとしているのか。

 「島根でもようやく、という感じだ」

 中学3年生の娘を持つ浜田市在住の男性は感慨深げに言う。

 娘にはADHD(注意欠陥多動性障害)やてんかんの症状がある。小さな頃から周囲の認知や理解度は高くはなかった。ほかのきょうだいを引き合いに「末っ子だから甘やかしすぎたのではないか」と親族に責められ、症状を説明したこともあった。

 たくさんの生徒の中で団体生活やコミュニケーションの力を養ってほしいとの思いから、娘には普通高校に進学してほしいとの願いがある。2021年度から島根県が高校での特別支援教育に本格的に踏み出すことに「(子どもの)選択肢は広がると思う」と歓迎する。

▼同級生との口論

 通級指導が普通高校にも必要になった背景には、医学的な見地から問題を抱える状況が客観的に把握されて、教育現場で課題を認識できるようになったことがある。

 県教育委員会によると公立高校の普通学級で「特別な支援」が必要とされる生徒は増える傾向にある。2019年度は3・1%と1学級に約1人の割合だ。

 小中学校では既に専門の教職員が各校を巡回する仕組みがあり、高校での応用が焦点となっている。

 高校生の段階では、具体的にどのような課題があるのだろうか。

 高校1年生の時、医師から「広汎性発達障害(PDD)」の診断を受けた浜田市内の20代男性は、幼い頃から言葉や文面通りに物事を受け取る傾向が強く「察しろ」「言わなくても分かるだろ」といった発言に反発し、同級生との口論を繰り返してきた。

 所属していた部活動で後輩たちから避けられ、他人との距離が縮まらなかった経験を振り返り「ぶつかり合った事に対して、周りがフォローしてくれる環境であってほしい」と願う。

▼互いを認め合う

 21年度、特別支援教育の拠点校に指定されたのは出雲、浜田の両校だ。

 常駐する専門の教職員が他校を訪問して、生徒の課題に障害に応じた指導を行うほか、相談窓口として学校同士の連携構築や授業づくりも担う。浜田では専門の執務室を開設し、通級指導に向けた他校への取り組みの周知や支援計画の策定に取り組み始めた。

 養護学校などでの指導経験を経て、4月から浜田高校で勤務する山本明宏教諭は「誰もが互いを認め合いつつ、個々の能力や特性を発揮しやすい学校環境を作りあげていきたい」と抱負を話した。

 05年に施行された発達障害者支援法は、人格や個性を尊重しつつ共生社会の実現を目指すことを理念としている。 

 さまざまな発達障害は本人が意識していないケースも少なくない。取り組みを軌道に乗せるには、担当以外の教職員や、普段一緒にいることが多い生徒の理解が欠かせない。まずこうした雰囲気作りを校長らが先頭に立って進めてほしい。