政府は、菅義偉政権で初となる経済財政運営の指針「骨太方針」を決定した。「こども庁」の創設検討や最低賃金の引き上げなど近づく衆院選挙でのアピールを意識したとみられる政策が並ぶ一方で、財政健全化の道筋や負担の在り方については結論を先送りしたあいまいな表現が目立つ。

 新型コロナウイルスによる不景気に加え少子化の加速、国の借金増などで将来への不安が膨らんでいる国民に、これで安心を与えられるだろうか。

 今年の特徴の一つは、菅首相の看板政策(1)グリーン社会(2)デジタル化(3)地方創生(4)子育て支援―を成長の「四つの原動力」と位置付けたことだ。

 中でも目を引くのが、菅首相が意欲を示すこども庁を念頭に、子育て支援のため新たな行政組織の創設検討に着手すると明記した点である。自民党も同様の提言をまとめており、選挙での票獲得を念頭に置いた政策と言えよう。

 コロナ禍で結婚・出産が急減した現状を考えれば、子育て支援の強化は当然だ。問題は、これまで長年の取り組みで改善できなかったものが役所を新設すれば解決するのかという点。さらに子育て支援の財源について骨太方針は「新たな枠組み」を検討すると盛り込んだ。具体的な方策には触れていないが、国民に負担を求めるのであれば選挙前に速やかに示すべきだ。

 地方創生では、早期に最低賃金の全国加重平均が千円になるよう引き上げを目指すとした。2020年度は902円で、東京などの都市部に比べ地方の低さが目立つ。賃金の低さは若年労働者の都市部流入の一因であり、最低賃金制度で底上げを図ることは重要だ。ただこの仕組みには、賃上げが重荷となり雇用数が減る副作用が指摘される。実施に当たっては地域情勢を踏まえた議論が欠かせない。

 今年の方針で注目したいのは、コロナ禍を受けて昨年は明記しなかった財政健全化の目標が復活した点だ。問題はその書きぶりである。

 国・地方の政策経費を税収などで賄えているかを示す基礎的財政収支について、政府は25年度の黒字化目標を掲げている。赤字である限り借金の残高が増え続けるためだ。この点について方針は、21年度中に検証した上で「目標年度を再確認する」とした。

 景気低迷に加えコロナ対策費などの支出増大から黒字化はかなり困難になっており、この記述は目標の見直しや先延ばしに含みを持たせたと見ていいだろう。

 同様の財政状況にあって米国や英国は、歳入改善のための企業や富裕層向けの増税を表明済みだ。骨太方針も税制改革で「応能負担の強化」を盛り込んだが、主要国最悪の財政状況にある日本としては健全化への本気度が疑われよう。国民の将来不安の根本にあるこの問題に、菅首相は正面から向き合うべきだ。

 一方、コロナ対策では広域的な病床確保の連携やワクチンの開発、接種が円滑にいかなかった教訓を踏まえて、国や自治体が迅速に要請・指示できる仕組みなどのため「法的措置を速やかに検討する」と強調した。

 コロナ禍は現在進行中であり終わっていない。有効な対策に法改正などが必要というのであれば、国会を開いて対応するのが政府、与党の国民への責任であろう。