森友学園への国有地売却を巡る公文書改ざんを強いられ、自殺した財務省近畿財務局元職員赤木俊夫さんの妻が国や当時の財務省理財局長で元国税庁長官の佐川宣寿氏に損害賠償を求めた訴訟で、赤木さんが改ざんの経緯を詳細に記録したとされる「赤木ファイル」が国側から原告の妻側に開示された。大阪地裁には既に提出されている。

 財務省が2018年に公表した調査報告書は森友学園側との交渉記録廃棄や決裁文書改ざんを巡り「理財局長が方向性を決定付けた」などと、大まかな経過を説明したにすぎない。佐川氏が具体的にどういう指示を出し、理財局と近畿財務局との間でどのようなやりとりがあったか明らかにしていなかった。

 開示されたファイルは518ページに上り、この中で赤木さんは「現場の問題認識として、既に決裁済みの調書を修正することは問題があり、行うべきでないと強く抗議した」と記している。また「佐川局長から国会答弁を踏まえた修正を行うよう指示があった」との財務省からのメールなどをコピーして残していた。

 菅義偉首相は財務省の報告書と、佐川氏らを不起訴処分とした検察の捜査で結論は出ていると再調査を否定している。しかしファイルの内容は詳細を極める。そこに記されている財務省担当者らの名前などから黒塗りを外した上、国会主導で再調査を尽くすべきだ。

 国有地が8億円余りも値引きされ、森友学園に売却されたことが17年2月、発覚した。開校予定だった小学校の名誉校長に当時の安倍晋三首相の妻昭恵氏が一時就任していたことから、野党は値引きとの関係を追及。国会は紛糾し、首相は「私や妻が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」と答弁した。

 理財局長だった佐川氏は学園側との交渉記録は廃棄したとして説明を拒否。「政治家の関与はなかった」と言い切ったが、前後して理財局主導で交渉記録廃棄、決裁文書から昭恵氏や政治家に関する記述を削除するなどの改ざんが行われた。

 赤木さんは「17年2月26日 本省の指示に従い、調書、経緯の原本を差し替え」「3月8日 相手方に優遇したとみられる部分を修正」などと財務省の指示をファイルに整理。「原調書のままで説明するのが適切と繰り返し意見した」「理財局長からの指示などがその都度メールで投げ込まれてくる」と書いている。

 こうした記載とともに、財務省が「森友関係の書類は開示請求があった際のことを踏まえると、削除した方が良いと思われる箇所がある」とし「17年3月末をめどにできるよう進めていきたい」と依頼してきたメールなども収められている。

 ファイルによって財務省の報告書を肉付けしていくのは可能だろう。例えば、報告書は政治家らの名前が出てくる記載について「理財局長はそうした記載のある文書を外に出すべきではないと反応。総務課長らは記載を直す必要があると認識した」とした。しかし、それ以上の説明はない。

 組織ぐるみで公文書を改ざんしたり、記録を廃棄したりするという前代未聞の不祥事に関する報告書としては不十分と言わざるを得ない。そもそも身内で調査したことにも疑問が残る。赤木さんが信念を持って残したファイルを足掛かりに全容解明に踏み出したい。