トモエガモの大群の目撃が宍道湖周辺で相次いでいる。密集して群れをなし、車の走行音のような音を立てて一面を黒く埋め尽くすように飛ぶ。環境省のレッドデータブックで絶滅の危険が増大している「絶滅危惧2類」に指定されているが、全国的に増加傾向にある。何が起きているのか。専門家に聞いた。
(出雲総局報道部・佐野翔一)
 

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トモエガモの生態


 トモエガモの成鳥は体長約40センチ、重さ約0・5キロ。雄の横顔にデンデン太鼓のような黒、緑、黄色の巴模様があるの名前の由来だ。20世紀後半から日本へ飛来が減少しており、レッドデータブックで「絶滅危惧2類」に指定されている。

 群れをなす習性は、天敵のタカやワシといった猛禽(もうきん)類に襲われにくくするためとされる。巨大な生き物のようにうねりながら飛ぶ。ロシアの北極圏で繁殖し日本、韓国、中国で越冬する。

 野鳥の調査を手がけるNPO法人バードリサーチ(東京都)によると、日本では、石川県や島根県など日本海側や九州の有明海周辺に越冬地が多く、太平洋側では千葉県や宮城県で冬を過ごす。韓国には50万羽近くの大きな越冬地があるという。

水面を泳ぐトモエガモ=出雲市内(宍道湖グリーンパーク提供)

 

“絶滅危惧”が急増のワケ


 環境省と都道府県が実施するガンカモ類の生息調査によると、2022年に全国で約2万2千羽だったトモエガモは、23年は約4万8千羽に増加した。島根県に目を移すと、年間1万羽未満だった宍道湖への飛来は、2024年1月には5万8千羽に急増している。

 宍道湖西岸にある出雲空港の滑走路付近で目撃されており、空港管理事務所はエンジンに鳥が巻き込まれたり、主翼などにぶつかったりする「バードストライク」を警戒する。滑走路の近くにいる場合は専用の打ち上げ花火で追い払っており、今のところ運航には支障が出ていない。

 急増する要因についてバードリサーチの神山和夫研究員は...