亡くなった母のほほ笑みをモチーフにした福留信子さん(52)=鳥取県大山町高橋=の絵画作品「幸せの棺(ひつぎ)」が、日本人芸術家を発掘する公募展で入賞し2月、米国で画家としてデビューする。福留さんは「世界のアーティスト100人」としてタイムズスクエアのスクリーンで紹介される。
作品は縦223センチ、横66センチの段ボールをキャンバスに、煙と共に昇天する両親らの様子をオイルパステルやアクリル絵の具で鮮やかに描いた。29年前に肺がんで母を亡くした際、棺の中で浮かべたほほ笑みに癒やされた経験を題材にした。
母が亡くなった時、福留さんは悲しみと孝行ができなかった後悔で胸がいっぱいだった。しかし、棺の中で母を見つめると「『ごめん』よりも『ありがとう』と思えるようになり、死を受け入れられた」という。ほほ笑みは「母からの最後の贈り物」と気付かされた。
鳥獣害防護の電気柵を販売する会社を夫と営み、案内のはがきやチラシにイラストを描く。絵画制作は約3年前に始め、交流サイト(SNS)で公開してきたが、独自性を見いだせずに悩んでいた。そんな中、SNSで公募展「ジャパン コンテンポラリーズ5 ステッピング イントゥー ア ワールド2」の募集を見て一念発起。両親の姿や葬儀の日を思い起こし、テーマを「母のほほ笑み」に設定した。
家族旅行で行った比叡山延暦寺の五色幕から着想を得て、仏教の「五色」を背景にあしらった。福留さんは「見送る人の次の一歩を踏み出す勇気や希望を表現しようと、明るく、ポップにした。大切な家族を亡くした人に共感してもらい、勇気づけられたらうれしい」と思いを込めた。
公募展は、バラエティー番組などの制作に携わる放送作家の安達元一氏と、ニューヨーク在住で日本文化を紹介する佐藤恭子氏が企画。経歴不問で絵画を公募し、秀作を美術品取引の本場ニューヨークで15~21日に展示する。
福留さんは帰国後の4月下旬に大山町内で初の個展を予定している。
(中村和磨)













