ダンゴムシを探す子
ダンゴムシを探す子
ダンゴムシを探す子

 近ごろ、立ち止まり、下を見ることが増えた。落ち込んでいるわけではない。それは3歳の娘が実家の庭で捕まえたダンゴムシを「飼いたい!」と言い出した日から始まる。

 「なるほどこの子はダンゴムシを選ぶのか」と感心しながら虫かごを購入。土や石ころ、葉っぱを敷き詰め、野菜などを入れて共同生活を始めた。

 娘は毎朝起きると虫かごに駆け寄り、いとおしそうにそれを見つめたり、話しかけたりする。

 子の世界に付き合っているつもりだったが、存在が日常になればこちらも情が移る。無数の手足をカサカサ動かし、何度も転落しながらも目当ての小石によじ登ろうとするけなげさが、かわいらしい。妻も「癒やされる~」などと口にし、熱心に野菜の切りくずなどを食べさせている。

 伸び伸び暮らしていたダンゴムシにとってはとんだ迷惑だろう。申し訳ない。環境を整えるとともに、子が虫かごをぞんざいに扱わないよう、注意している。

 娘に加え、1歳の息子も公園や散歩の道中、しきりにしゃがみ込み、さらに家族を増やそうと夢中になっている。当初は数匹だったが、今では…。

 30代半ばで再び虫の世界に引き戻されるとは思ってもみなかったがとても新鮮。子どもらと一緒に見る足元にはダンゴムシに限らず、アリやバッタなど生命があふれていた。

 大人になり、見ている世界が広がった気になっていたが、果たしてそうだろうかと思う。幼少期から数十年が経過しても足元の世界は変わらず、黙々と生きている一方、こちらはそれを存在していないかのように過ごしてきた。久しぶりの再会。「ごめんなぁ~」と言いたくなった。

 スマホを容易に扱い、雨の日はユーチューブに夢中になるわが子を見ると、時代は変わったなと思う。それでも、虫と戯れる子の表情は今も昔も変わらないのだろう。どうか、小さな生き物に多くを学んでほしい。

 ところで、ここ数日気がかりなのは息子がダンゴムシを見ながら「おとぉ~ちゃん」と連呼していること。これは何を意味するのか、考え込んでいる。

 (報道部・多賀芳文)

 =毎週土曜掲載=

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