農家はうつのリスクが高いことが海外の研究で報告されている。天候など自然現象に経営が左右されることや国際競争の激化、近隣農家の減少による孤立といった事情が背景にあるとみられる。
日本でも農業経験の長い人はそうでない人に比べ、うつ症状の疑われる割合が多い傾向にあり、周囲に農家が少ない場合にその傾向が強まるという研究結果を、東京大と京都大、千葉大のチームがこのほど発表した。
健康政策の科学的基盤づくりを目指す研究プロジェクト「日本老年学的評価研究」が2016年に全国39市町村の高齢者約15万人を調べたデータと、政府の農業統計データを併せて解析した。
まず、うつ症状が疑われる人の割合は、農業経験の長い人で19・1%と、そうでない人の16・7%よりも多かった。
次に、住んでいる地域の農家の密度や農業の種類との関連を分析。農作物をつくる農家の場合、うつ症状が疑われる人の割合は、農家密度が「最も高い」地域で男女とも19%なのに対し「最も低い」地域では男性が25%、女性が27%に上り、酪農畜産を営む農家では農家密度が「高い」地域で男女とも19%で「低い」地域では男性が22%、女性が20%だった。
チームの東京大大学院医学系研究科大学院生で獣医師の金森万里子さんは「農業は地域での助け合いが多い仕事。地域に同業者が少ない場合、助け合いをしづらいことがメンタルヘルスに影響している可能性がある。地域を越えて助け合える仕組みの充実が必要だと思う」と話している。