コンビニエンスストアなどでレジ袋が有料化されてから7月1日で1年になる。レジ袋を断る人の比率が導入前の約3割から約7割に向上するなど、プラスチックごみ削減に一定の効果はあった。
6月初めには、プラごみのリサイクル強化と排出削減を目指す新法「プラスチック資源循環促進法」が成立し、環境省などは来年4月からの施行を目指している。
深刻な海洋汚染を招いている使い捨てプラスチックごみ対策が進んだことは評価できる。だがレジ袋は使い捨てプラスチックのごく一部で、新法も使い捨てプラスチックの大幅な削減につながるものとは言い難い。
使い捨てプラスチック製品を生産する企業の責任強化など、思い切った政策転換がなければ問題解決にはつながらない。
新法の目玉の一つは「一括回収」という制度の導入だ。プラごみをリサイクル向けに回収している市区町村の多くは、食品トレーや弁当容器などを対象としている。新法は、これにおもちゃや文具、ハンガーといったプラごみも加えて「プラスチック資源」として回収することを市区町村の努力義務とした。
日本ではごみの回収とリサイクルが進んでいると思われているが、プラスチックをリサイクルして元の材料として再利用する「マテリアルリサイクル」や化学原料として再利用する「ケミカルリサイクル」に回るものは計約25%にすぎない。
熱回収や発電への利用は行われているが、プラごみの70%近くが焼却に回っている。リサイクルに手間と費用がかかる割に、リサイクル品の市場が国内では限られていることが大きな原因だ。
これらの状況を放置したままで対象商品を増やしてリサイクルを強化しても、焼却量が増えるだけだ。これは地球温暖化対策の観点からごみ焼却を減らしてゆくとの環境省の政策とも矛盾する。
新法はまた、飲食店やコンビニなど使い捨てのスプーンやフォーク、ストローを多く提供する事業者には、有料化や代替素材への切り替え、受け取り辞退者へのポイント付与などの削減策を義務付ける。怠れば改善を勧告・命令し、それでも従わない場合は50万円以下の罰金を科す。対象商品が増えれば削減に一定の効果を持つ可能性はあるが、業界からの抵抗も予想され、効果は未知数だ。
プラごみ削減政策の重要な考え方は、製品を製造した企業に、それがごみになった時の責任を負わせ、リサイクルや回収の費用も負担させるといった「拡大生産者責任」の原則だ。
日本の包装ごみリサイクル制度では、最も手間と費用がかかる回収と中間処理が地方自治体の負担とされるなど、拡大生産者責任の徹底が不十分なため、生産企業が使い捨てを減らしたり、リサイクルしやすい製品を作ったりという動機づけにならないと指摘されている。一括回収を導入して対象製品を増やすことに一部の自治体から慎重論が出ているのもこのためだ。
今の日本の政策に必要なことはリサイクル重視の政策を根本から転換し、拡大生産者責任を徹底して、使い捨て製品の削減につながるような企業の行動を促す制度の導入だろう。既に多くの国で行われているレジ袋やストローなどの使用禁止といった強力な対策も検討する必要がある。