ー 4月に就任されました。特に力を入れていくことは何ですか。

双方向の留学や学内交流を促進し、キャンパス内のグローバリズム・国際化を活発化させたいと考えています。VUCA(ブーカ=変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代が叫ばれ、政治家も科学者も未来を正確に予測できない今、どうすれば世界的な危機を乗り越え、持続可能な社会がつくれるのかを真剣に探らなければならず、国立大学にはその使命があります。

アジアなどの開発途上国から島根大に来る学生は、現状への危機感を持って学びに来ています。日本人学生も、彼らとふれ合うことによって世界を理解します。

ー 学生と地域社会の接点を増やす方針を掲げておられます。

世界とは、地域の集合体です。この地域の現場に学生が出て行く機会をもっと作り、「なぜ勉強するのか」を実感してもらうことが重要です。医療やまちづくりなどさまざまな地域の現場への派遣をエリア、人員規模共に拡大していく方針です。

ー 2023年度に設立した「材料エネルギー学部」が2年目を迎えます。

産官学連携で発足させた最大の目的は、専門的な学びを修めた学生を輩出することで県内企業を研究開発型企業へと転換し、県内の産業振興に貢献していくことです。いかに受け入れてくれる企業を増やしていけるかが重要だと考えています。前向きな企業と共同研究や新事業開発に取り組み、モデルケースを作り開拓していきたいです。

ー 持続可能な開発目標(SDGs)実現への強い思いを抱いておられます。

学生も教職員も、学びや成長を社会に還元していかなくてはなりません。24年度、学内に「SDGs推進室」を設置します。高校生など若者はSDGsへの意識が高いです。

各自の研究を単にひもづけるのではなく、対外アピールを機に、いま一度自らの研究が持続可能な社会の構築に資するかという観点で顧みて、価値を高めてほしいと願っています。

人間の営みが地球に影響を与え(人新世)、限界を超えつつある現在、科学界、政治・経済界にも正解はなく、SDGsなど世界が協力して道を探して実践するしかありません。

古い世代も全力を尽くしますが、若い世代の皆さんが主体となって考え、世界や地域の人々と触れて、一緒に真に持続可能な未来を切り開いていってください。

大谷 浩=鳥取県八頭町出身(67歳)2024年4月に現職に就任。

京都大学医学部を卒業後、1995年に島根医科大学教授、2009年に島根大学医学教育担当副学長、11年に同大学医学部長、22年に同大学理事・副学長を歴任。趣味は音楽鑑賞(バッハなどクラシックから、ジャズ、ロック、ポップスなど広く)や絵画・美術鑑賞(セザンヌなど西洋美術 から、琳派、慶派など含む日本美術など広く)と読書。

国立大学法人島根大学HP