中国電力島根原発2号機(松江市鹿島町片句)は地震や火山噴火リスクを適切に考慮しておらず危険だとして、山陰両県の住民が中電に運転差し止めを求めた仮処分で、広島高裁松江支部(松谷佳樹裁判長)が15日、決定を出す。差し止めが認められれば再稼働できず、中電が12月を目指す再稼働の日程や、原発回帰を進める国のエネルギー政策に影響するため、判断が注目される。
島根原発で運転差し止めの仮処分判断は初めて。争点は、敷地と宍道断層の近さ▽耐震設計の目安となる地震の揺れ「基準地震動」の評価▽三瓶山の大規模噴火による敷地内降灰のリスク▽原発30キロ圏内に約45万人がいる立地条件▽避難計画の実効性-など。住民側は稼働によって人格権が侵害されると主張する一方、中電は危険性の具体的な指摘がないと反論し、申し立て却下を求めている。

仮処分は民事保全法で定められた手続きで、決定は直ちに効力が生じる。訴訟は運転差し止め控訴審として2010年から係争中で、判決確定までに時間がかかるため、住民側が23年3月に仮処分を申し立てた。
仮処分で運転差し止めとなった原発は全国でこれまでに4例ある。関西電力高浜原発3、4号機(福井県)は15年4月に福井地裁、16年3月に大津地裁がそれぞれ決め、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)は17年12月と20年1月に広島高裁から決定を受けた。いずれも電力会社側の異議によって1年程度で取り消され、再び稼働した。
島根2号機は全国で唯一、県庁所在地に立地し、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型。中電は今年8月の再稼働を目指していたが、安全対策工事の遅れで12月に延期した。
(高見維吹)