出雲市大社町での公演で落語を演じる桂吉弥さん=2020年7月14日、大社文化プレイスうらら館
出雲市大社町での公演で落語を演じる桂吉弥さん=2020年7月14日、大社文化プレイスうらら館

 全国的な新型コロナウイルスの感染拡大は、演芸界にもさまざまな変化をもたらした。島根県と縁の深い人気上方落語家で、11日に大社文化プレイスうらら館(出雲市大社町杵築南)で落語会を開く桂吉弥さん(50)は「落語や娯楽が実際の生活に必要なのかということを改めて考えさせられた」と振り返った。

 昨春、新型コロナの感染拡大で軒並み中止になった落語会。復活の動きは昨年6月ごろからだった。ただ、座席の間隔を空けるなど以前と雰囲気は異なる。

 吉弥さんは「がははと笑うとか、隣の人と肩をたたき合うとか、これまで当たり前だった風景ではない。お客さんに負担をかけているようで心苦しい」と胸の内を明かす。

 今年4月、「社会生活に必要なもの」として落語協会や東京寄席組合などが一時的に東京都の無観客開催要請に応じない一幕があった。吉弥さんは落語の存在意義にまず思いをはせた。「落語が生きていく上で必要なのか」。自らの結論は「(感染状況が厳しい中では)無理に集まって聞いてもらうものでもない。お客さんに届くよう今できる手段でやっていったらいい」と述べ、動画サイト・ユーチューブやビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」でのオンライン公演などさまざまな手段を模索する。

 吉弥さんはリモート寄席への出演のほか、稽古風景やNHK連続テレビ小説「おちょやん」について語る動画をアップ。「ぼやいていても仕方がない。どうやったら楽しんでもらえるか、技術や伝え方を高めていきたい」と前を向く。

 11日の大社文化プレイスうらら館での公演は13年連続となる。吉弥さんは「大阪の生国魂神社や京都の北野天満宮といった人が集まる場所に、簡易な小屋を建ててお客さんに来てもらったのが上方落語のルーツ。会場は出雲大社の近くで、すごく落語が似合う」と話した。 (新藤正春)