しまね海洋館アクアス(浜田市・江津市)で、飼育員が妊娠中のシロイルカのアンナとアーリャに授乳トレーニングを行っている。2頭は9月までに出産予定。飼育員が乳首に棒を当てながらゆったりと泳がせる訓練を続け、産まれてくる子どもの元気な成長を願っている。
2頭は昨年9~10月に妊娠が確認された。3度目の妊娠となるアーリャは、2009年と14年に1頭ずつ産み、元気に育った。今回2度目の妊娠となるアンナは初産だった09年、子にうまく授乳できなかったのが原因で10日後に死なせてしまった。
子どもは産後2年間、母と泳ぎながら乳を飲んで成長する。2頭のエコー検査を行うアクアスの獣医師、三島由紀さん(51)によると、母乳には栄養分に加え、感染症などへの免疫物資も含まれており、摂取が欠かせない。
ただ、出産後、母親は音などの刺激に敏感になりやすいといい、初産だったアンナは子どもにうまく授乳できなかった。当時の現場に立ち会った三島さんは「育たなかった例を無駄にせず、万が一トラブルが起きても、生存率を上げるために準備することが使命にある」と教訓を語る。
アクアスでは、出産前から授乳の姿勢に慣れてもらい、産後のストレスを和らげるため、ハンドウイルカの繁殖実績がある「いおワールドかごしま水族館」(鹿児島市)の取り組みを参考に、4月末にトレーニングを始めた。
トレーニングは飼育員が子どもの口に見立てた突起物を付けた長さ1メートル以上の棒を2頭の乳首に当てながら、ゆっくり泳がせる。
トレーニングは週4日、1回15分を3~4回行う計画で、産後も続ける。飼育員の周藤恭裕さん(27)は「(母イルカに)トレーニングの意図を理解させるのは難しいが、できる準備はしっかりしたい」と話した。
(宮廻裕樹)