絵本「ぼくは王さま」シリーズの挿絵で知られる和歌山静子さん(1940~2024年)の原画展が、安来市広瀬町布部、加納美術館で開かれている。温かく力強い描線の作品約100点が来場者を魅了している。
和歌山さんは京都市に生まれ、北海道函館市に移住し、戦時中、函館空襲を体験した。童話作家の寺村輝夫さんに見いだされ、1967年に代表作となる王さまシリーズの2作目「王さまばんざい」の挿絵を描き、以降、全ての挿絵を担当した。日中韓平和絵本シリーズ「くつがいく」を発表するなど精力的に活動した。
展示された原画では、キリンの首によじ登り、跳び箱を得意げに跳ぶユーモラスな王さまが目を引く。「くつがいく」の原画は、兵士の靴を主人公にして、履き続けた靴が破れ、最後には履く人のいなくなった靴から兵士の死を連想させる。
松江市在住、うださちこさんが物語を担当したモンゴルの祭りの競馬を題材にした「ムルンとサルタイ」では、砂煙を上げて馬が走る様子などを臨場感あふれる筆遣いで描いた。
千葉潮館長(64)は「皆さんがよく知っている王さまシリーズの絵で楽しい気持ちになってほしい。和歌山さんが大切にしていた平和への思いを訴える作品にも注目してほしい」と話した。
入館料は一般1100円、大学、高校生550円、中学生以下無料。7月28日まで。休館日は火曜日。(狩野樹理)