鳥取県職員を辞めて県東部の山間部で移動販売を始めた入江左和代さん(52)=鳥取市富安2丁目=が6月で開業1年となる。県内では昨年、JA系スーパーの相次ぐ閉店に伴い買い物環境の確保が課題となり、移動販売の役割が注目されていた。地域を回る中で見えてきた住民の暮らしの実態や移動販売の意義を聞いた。

 

商品の会計をしながら利用者と話す入江左和代さん=鳥取市佐治町古市


 5月15日正午前、移動販売車が鳥取市佐治町大井の集落を訪れると、住民3人が集まった。「これうまかったで」。商品の感想を言い合いながら弁当や魚などを購入。満足そうな表情で歩いて自宅に帰った。入江さんはこの日、鳥取市佐治、用瀬、河原3町を回った。

住民が待つ次の目的地に向けて山間部を走る移動販売車=鳥取市佐治町加茂


 県職員として33年間勤務した。移動販売を始めるきっかけになったのは、鳥取市周辺部に暮らした父(故人)の存在だ。80代で自動車の運転免許を返納し、生きがいだった買い物をはじめ、自由に外出できなくなった様子を見ていた。...