安定的な皇位継承策などを議論する政府の有識者会議は皇室制度や歴史の専門家らからのヒアリングを踏まえ、現在の皇位継承順位を維持する方針を確認した。これによって女性・女系に継承資格を広げるかどうかは将来的な課題として棚上げし、政府や国会への報告に向けては、皇族数減少に歯止めをかける方策を議論の中心に据える。
2017年6月、上皇さまの天皇退位を実現するために制定された退位特例法の付帯決議で、国会は政府に「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」を法施行後速やかに検討し、報告するよう求めた。しかし検討は長らく先送りされてきた。
父方が天皇の血筋を引く男系男子に継承資格を限定している皇室典範を尊重する自民党保守派が、女性・女系天皇につながる可能性のある女性宮家に強く反対しているからだ。今年3月、ようやく有識者会議が発足。4月には専門家のヒアリングが始まったものの、女性・女系天皇については賛否が割れ、女性天皇に賛成しても女系天皇には反対という人もいた。
意見集約の難しさが浮き彫りになり、有識者会議は深入りしない道を選んだとみられる。しかし皇族数を確保するだけでは皇位の安定継承につながらず、抜本的な解決はまたも遠のいてしまった。いつまで先送りを重ねるのか。国会主導の活発な議論が求められる。
16年前、当時の小泉純一郎首相の下で有識者会議が女性・女系天皇を容認し、男女を問わず長子を優先するとの報告書をまとめた。皇室典範の改正には至らなかったものの、その後、女性皇族が結婚後も皇室に残る女性宮家創設の議論につながり、今年3~4月の共同通信世論調査では、女性・女系天皇について賛成が80%以上を占めた。
自民党内には、男系女子の女性天皇を容認する声もある。天皇陛下の長女愛子さまを念頭に置いているとみられるが、母方で天皇とつながる女系天皇については皇室の歴史と断絶するとして、保守派が猛反発。戦後に皇籍を離脱した旧宮家の男系男子子孫に復帰してもらう、現在ある宮家の養子に入ってもらう―といった案を示している。
有識者会議による専門家ヒアリングでは女性天皇を巡り、21人中13人が賛成か条件付き賛成の立場を取った。反対・慎重を明確に表明したのは5人。一方、女系天皇については女性天皇に賛成した4人も反対した。
そうした中、秋篠宮家の長女眞子さまとの婚約が延期になっている小室圭さんの母親を巡る金銭トラブルを念頭に、女系天皇反対論を展開した専門家もいた。「女系継承とは、例えば眞子内親王のお相手との間に生まれたお子さんが天皇になるということだ」とし、旧宮家の男系男子子孫なら問題はないと訴えた。
今後の有識者会議では、皇族数の確保策として皇位継承資格の拡大とは切り離した形で、女性宮家創設と、旧宮家の男系男子子孫による皇籍復帰の是非が焦点となる。
継承資格者は現在、皇嗣(こうし)の秋篠宮さまをはじめ3人。ただ事実上、秋篠宮さまの長男悠仁さまに皇統維持の重圧を背負ってもらおうという構図になっており、政府内には女性・女系への継承資格拡大は数十年後の課題との声もある。あまりに危機感に乏しく、無責任と言わざるを得ない。