夏の夜空に浮かぶ「かんむり座」の左下にある暗い星が、約80年ぶりに急激に明るく輝く「新星爆発」を9月ごろまでに起こすと見込まれている。普段は肉眼で見るのが難しい10等級の暗い星だが、爆発により2日間ほどひときわ輝き、1000倍以上の2等級まで明るくなると予想されている。
新星爆発を肉眼で観測できるまたとない機会を前に、三瓶自然館サヒメルの竹内幹蔵天文事業室長(56)に新星爆発の仕組みや楽しみ方を聞いた。
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かんむり座は晩春から夏にかけて見つけやすい。ギリシャ神話に登場する酒の神様バッカスが、人間の妻アリアドネに贈った七つの宝石をちりばめたかんむりが妻の死後、天に召し上げられ星座になったのがかんむり座の由来となっている。
春の大三角の一角、うしかい座の1等星「アークトゥルス」のそばにあり、「U」のような特徴的な形をしているため、一度こつをつかむと見つけやすい星だ。
今回、新星爆発を起こすのは、かんむり座の左下にある「かんむり座T星」。地球からの距離は約3千光年もあり、普段は10等星で望遠鏡を使用しないと見えない星だ。
T星は「連星」と呼ばれる白色矮星(わいせい、主星)と赤色巨星(伴星)から成り立つ。十数年~数十年周期で新星爆発を繰り返す「再起新星」でもある。
新星爆発の仕組みは、赤色巨星の水素ガスが白色矮星の重力に引かれて白色矮星に入り込み、許容の限界を迎えると核融合反応で爆発する。

T星の爆発は前回が1946年2月、前々回は1866年5月に観測され、今回は78年ぶりに光ると予想されている。竹内さんは「一生に一度見られるかどうかの周期で光る貴重な再起新星で見逃せない」と断言する。