自民党本部に入る石破茂総裁=1日午前、東京・永田町
自民党本部に入る石破茂総裁=1日午前、東京・永田町

 かつて「再チャレンジ支援」という国の施策があった。安倍晋三首相の第1次政権時代の2006年。前政権の構造改革に伴う格差拡大が問題となる中、「誰もが再挑戦ができる社会の実現」を提唱した。

 ところが旗振り役の安倍氏は、参院選敗北と自らの体調悪化を理由に1年で辞任。その後、12年の総裁選で石破茂氏らを破り、下野していた自民党の総裁に復帰すると、同年末の衆院選で大勝。野田佳彦首相率いる当時の民主党から政権奪還を果たし、首相の座に返り咲いた。安倍氏本人が再挑戦に成功したのは何とも皮肉だ。

 こちらは再挑戦どころではない回数だ。12年前を含めて総裁選で何度も苦汁をなめた石破氏が5度目の挑戦で勝利し、ついに首相に就任した。各党代表質問などを経て9日に衆院を解散、「15日公示、27日投開票」の日程で衆院選を行うという。就任直後の支持率が高いうちに、との思惑があるだろうが、あまりに早い展開に目が回りそうだ。

 思えば党首討論などで石破首相と相対するのも“再挑戦組”の野田氏。元首相の肩書を持ちながら立憲民主党の新代表に就いた。自民の「政治とカネ」問題を踏まえ、「政権交代こそが政治改革」と捲土(けんど)重来を狙う。

 何とも因縁めいて興味深い構図だが、再挑戦で目立つのは政治家ばかり。党勢拡大に意識が向くのは仕方ないが、国民も再挑戦できる社会づくりを忘れてもらっては困る。(健)