中国の全国人民代表大会(全人代=国会)が北京で開幕した。李克強首相は冒頭の政府活動報告で新型コロナウイルス対策の成果を誇示し「世界一の経済大国」への道を視野に入れた中期経済目標「第14次5カ年計画」(2021~25年)と35年までの長期目標を打ち出した。

 昨年、中国はコロナ感染を強権的な手法で早期に封じ込め、経済再建に着手した。李氏は今年もさらに積極財政、改革、技術革新を推進するとし、国内総生産(GDP)成長率目標を「6・0%以上」に設定した。

 しかし、米中貿易摩擦は続き、中国の富国強兵路線や非民主的な政治体制について米欧日の不信感は根強い。中国は公正な経済貿易制度づくりや国際協調に努め、国際社会に信頼される新興大国を目指すべきだ。

 コロナの影響により、昨年の米国のGDPはマイナスだったが、中国は2・3%増を保ち、米中の差は縮まった。英国の経済調査機関は「従来の33年より早まり28年には中国が世界一になる」と予測を手直しした。

 李氏は5カ年計画と長期目標の重点として(1)発展の質の向上(2)科学技術の革新(3)内需拡大(4)農村振興―などを列挙。35年までの長期目標には「1人当たりGDPを中進国の水準に引き上げる」と明記した。

 だが、米国のバイデン新政権はトランプ前政権の対中強硬方針を踏襲し(1)貿易赤字の解消(2)知的財産権の保護(3)国有企業優遇の停止―などを要求し、中国IT企業の締め出しも続ける構え。

 李氏は「環太平洋連携協定(TPP)への参加を前向きに検討する」としており、米国が求める知的財産権の保護など公正な経済貿易制度づくりは不可欠だ。

 21年の国防費は前年比6・8%増の1兆3553億4300万元(約22兆6千億円)で、20年予算案の同6・6%増より伸び幅が拡大した。軍備増強を続ける中国への脅威論が強まりそうだ。

 今会議では、香港の民主派を政界から一掃する選挙制度見直しも主要議題。中国は昨年、香港国家安全維持法を施行して民主派の活動家や議員の訴追を進める。香港の自由と民主主義を葬り去り「一国二制度」を完全に骨抜きにする新たな動きに米欧日などの反発は必至だ。

 中国共産党は7月に創立100周年を迎える。習近平国家主席(党総書記)は100周年までの目標「小康社会(いくらかゆとりのある社会)の全面的な達成」を宣言し、党と自らの統治の正統性をアピールするだろう。

 9年前にトップの座に就いた習氏は自らへの権力集中を着々と進めており、来年の党大会で総書記3選を果たして長期支配を狙う。中国のかつての独裁者、毛沢東は文化大革命という大混乱を引き起こした。習氏が独善に動けば、内外に悪影響を及ぼしかねない。

 李氏は国際関係について「平和的な外交政策を堅持し、グローバル・パートナーシップを発展させ、新型国際関係と人類運命共同体の構築を促進する」と強調した。中国脅威論をかわすための美辞麗句に終わらせず、真の人類の共生に向けた有言実行を求めたい。

 中国は自国の利益だけを追うのではなく、コロナや地球温暖化対策などグローバルな問題の解決のため大国として積極的な役割を果たすべきだ。