海は広いから魚や貝はたくさんいるはず-。そう思いきや、地球規模(きぼ)で人口が増(ふ)えている今、世界の水産資源(しげん)の4割(わり)近くが「取りすぎ」の状態(じょうたい)にあり、危機(きき)に直面していると言われています。
「取りすぎ」を調整
魚介類(ぎょかいるい)はもちろん生き物ですから、子孫を増やすスピードを超(こ)える勢(いきお)いで人間が取ってしまうと、その個体数(こたいすう)は減(へ)っていきます。減り続ければ、生き物同士(どうし)の関係(生態系(せいたいけい))のバランスがくずれて、他の生き物の個体数も変わってしまいます。
私(わたし)たちの食事にだって大きな影響(えいきょう)が出ます。みなさんが焼き魚や海鮮丼(かいせんどん)が食べられなくなる日がやって来るかもしれません。さらに漁師(りょうし)や流通、加工に携(たずさ)わる人が仕事を失うことにもつながりかねないのです。
水産資源と人々のくらし、その両方を守るためにはどうすれば良いのか。重要なのは、漁獲量(ぎょかくりょう)を調整して取りすぎないようにすることです。でも、どんな取り方をされたのかなんて、魚や貝に聞くわけにはいきませんよね。そこで、注目したいのが青いマークです。
ルールを守った証
このマークは、魚や生き物のすみかを大切にしながら、ルールを守って取った水産物であることが消費者(しょうひしゃ)に一目で分かるよう国際的(こくさいてき)な組織(そしき)「海洋管理協議会」(MSC(エムエスシー))が作ったもので、「MSC『海のエコラベル』」とよばれます。厳(きび)しい基準(きじゅん)をクリアした漁業で取られた魚介類とその加工品(練りものや缶詰(かんづめ)など)にだけ付けられます。
スーパーなどで買い物する機会があったら、マークをさがしてみてください。マークが付いた水産物を選ぶことは、豊(ゆた)かな海の環境(かんきょう)がずっと続くようにすることや未来の食卓(しょくたく)を守ること、漁業に携わる人を支援(しえん)することにもつながるはずです。
(本田隆行(ほんだたかゆき)・サイエンスコミュニケーター)
ほんだ・たかゆき 鳥取県三朝(みささ)町出身で、1982年生まれの「科学とあなたをつなぐ人」。神戸(こうべ)大学大学院時代の専門(せんもん)は地球惑星(わくせい)科学でした。日本科学未来館勤務(きんむ)を経(へ)て国内でもめずらしいプロのサイエンスコミュニケーターとして活動中。
養殖にも「お墨付き」
天然の魚介類が減(へ)る中、注目されているのが養殖(ようしょく)です。人間の手で増やして育てることができるので、世界中で急速に広がっています。ただ、育てる環境や方法を正しく管理しないと、働く人に無理をさせてしまうだけでなく、周りの環境を悪化させたり、生態系(せいたいけい)を乱(みだ)したりする恐(おそ)れがあります。
そこで、養殖でも環境に気を配りながらきちんとルールを守って作られた水産物であることを示(しめ)す認証(にんしょう)マークが作られました。国際的な組織「水産養殖管理協議会」(A(エー)S(エス)C(シー))が与(あた)える「お墨(すみ)付き」で、青みがかった緑色をしているのが特徴(とくちょう)です。
みなさんの食卓に並(なら)ぶ食べ物を未来の地球に住む人も食べられるようにするには、こうした認証マークを一人一人が気にし続けることが大切なのかもしれません。