毎試合のように青く染まる松江市総合体育館。かつて、選手として真剣勝負を繰り広げたコートは仕事場に変わった。元プロバスケットボール選手の広瀬健太(39)=松江市出身=は、男子Bリーグ1部(B1)・島根スサノオマジック育成強化本部長として第二の人生を歩み始めた。目線の先にあるのはチームの勝利、そして古里のバスケットボールの未来だ。(interviewer・清山遼太)

#(中)チームメートと衝突、頼もしい主将に
#(下)14年のプロ生活、導き出した「バスケ哲学」

10年後に後悔するのでは

 望外の大勝に沸く観客を前にしても表情一つ変えなかった。10月23日、松江市総合体育館。西地区の強豪、琉球ゴールデンキングスに37点差をつけて勝った瞬間も、会場の片隅でいつも通り腕を組んで静かに試合を見守った。

 うれしくないはずはない。島根がB1に昇格した2017~18年シーズン以降、琉球に30点差以上をつけて勝利するのは初めて。なおかつ、勝利に貢献したのは自らが獲得に尽力した選手たちだったからだ。フロント入りしてからの自らの歩みに少しだけ自信を持てた瞬間でもあった。

 08年に日本リーグ(当時)のパナソニックトライアンズに入団。B1のサンロッカーズ渋谷では、中心選手として活躍しBリーグ初代スチール王を獲得。日本代表も経験した。厳しい競争を勝ち抜いた14年間。選手生活にピリオドを打った後、故郷に錦を飾ったのは23年夏だった。

 「詳しくは言えませんが、...