山陰両県にあるマンション一室。室内では数人の男性がくつろいでいる。
テレビを見る人、スマホをいじる人、たばこをふかす人。彼らは女性を送迎するドライバーとして出番を待っている。
ほどなくして一人の男性のスマホが鳴った。
「○○○(女性の名前)ちゃんでお願いします」
相手は中年の客。電話を鳴らすのは今月に入って2回目だ。
店長を務める男性が「○○○ちゃんを○○町の○○○○まで、よろしく」と指示を出すと、ドライバーの一人が車を回し、待機していた店員の女性を乗せていく。
ここは派遣型風俗店、いわゆるデリバリーヘルスの事務所だ。
新聞は原則、実名報道だが、匿名でなければ語れない背景や事情を持つ人もいる。その声から社会の断面を見る「顔なき…声」。今回は山陰両県内に拠点を置くデリヘルの男性店長が語った。毎晩、どこかで繰り広げられる風俗産業の世界とは…
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予約電話を受けてから送迎までは一分一秒を争う。客のクレームが理由ではない。店長は「早く送り届けないと、働いている女性側からクレームが入るんです」と明かす。
人気を集める女性の場合、一晩で多くの客を相手にする。道の選択に失敗して生じる5分10分のロスが、「その日に予約を受ける男性の数」=「女性の収入」...