北野恒富が原画を担当したポスターについて解説する中尾慶治郞副館長=鳥取県南部町下中谷、祐生出会いの館
北野恒富が原画を担当したポスターについて解説する中尾慶治郞副館長=鳥取県南部町下中谷、祐生出会いの館

 鳥取県南部町出身の孔版画家・板祐生(1889~1956年)が収集した明治から昭和初期の呉服店などのポスターの企画展が、同町下中谷、祐生出会いの館で開かれている。芸者や子どもを描いた36点が並び、訪れた人が見入っている。17日まで。

 1920年ごろまでのポスターは鑑賞用に一点ずつ手作業で刷られたものが多い。柔らかな陰影で立体感を出した顔や細かな着物柄が目を引く。輪転機が普及してからは商業的な意味合いが強くなり、商品や建物が入ったデザインが増えていったという。

 1916年の飯田呉服店(現・高島屋)のポスターは、大阪画壇を代表する日本画家・北野恒富が原画を担当し、人気芸者の「若松」を描き、当時から好評だったという。優しげな表情を繊細に描写している。ポスターに入った折り目は、祐生が特に気に入って周囲に見せて回ったことを物語っている。

 中尾慶治郞副館長は、描かれた人物の服装が男児から女児、大人の順に洋服になっていることを例に「ファッションや印刷技術、ポスターに対する認識の移り変わりに注目してもらいたい」と話した。

 午前9時~午後5時。火曜休館。入館料は一般300円、高校・大学生200円、中学生以下無料。同館では掛け軸のコレクション展も開催している。

(中村和磨)