ボクシング女子フェザー級決勝で入江聖奈(日体大)が2019年世界選手権覇者のペテシオ(フィリピン)に5―0で判定勝ちし、日本女子初出場で金メダルを獲得した。日本勢の優勝は1964年東京五輪バンタム級の桜井孝雄、12年ロンドン五輪ミドル級の村田諒太に続き3人目。
■運動音痴、実った努力
「(歴史の扉を)全開にしちゃったかな」。日本女子で初めて五輪のリングに上がり、快進撃を続けてきた入江聖奈が声を弾ませた。かつて、逆上がりもできないほど運動音痴だった女の子が手にした「世界一の称号」。首にかけられた金色のメダルが天真らんまんで無邪気な笑顔を引き立てた。
決勝の相手は入江が代表内定を決めた2020年の東京五輪アジア・オセアニア予選準々決勝で勝利したネスティー・ペテシオ。入江によると決勝前の通算戦績は2勝1敗。力強いパンチを警戒しながら、「(誰にも)負けない自信がある」という左ジャブを軸に強気に攻めた。
1回は入江のペース。左ストレートを当てると、終盤には右のフックや踏み込んだ左パンチを顔面に完璧にヒットさせ、審判員の判定は5-0。2回は果敢に前に攻めてくる相手に1-4と追い上げられ、最終ラウンドを迎えた。
「行くしかない」。積極的に前に出ることだけを考えていた。接近戦に持ち込こまれても、打ち負けないように左ストレートにボディーのコンビネーションで応戦。試合終了のゴングが鳴るまで攻める気持ちを忘れなかった。
「運動が苦手な子でも努力を諦めなかったら何かをつかむことができる」。左ジャブを磨くために男子ボクサーのパンチを動画で研究したり、重たいレジ袋で手首を鍛えるなどボクシングを始めて13年間続けてきた努力が五輪の舞台で実を結んだ。
「女王」になった直後の記者会見で「有終の美で終わりたいので、大学いっぱいでボクシングはやめるつもりだ」と表明。満足感がにじみ出た表情で、最初で最後になるであろう五輪を締めくくった。 (藤原康平)
(両国国技館)
▽女子フェザー級決勝
入江 聖奈 判 定 ペテシオ
(日体大) (フィリピン)