
―医学部が10月に創立50周年を迎えます。
医学部は、人の活動の基本となる健康・生命を支える人材を育成してきました。治療と予防を含む地域包括ケアや、広い知識や技能を持った医師を地域に輩出できるよう、総合診療医の育成にも力を入れており、先進的に課題へのアプローチをしています。人口減少問題解決に向けて、母親が安心して子どもを産み、育てることができるよう、産科や小児医療のセンターの体制を整えます。
―学長就任から1年がたちました。成果と課題を教えてください。
次世代たたら協創センター(NEXTA)や材料エネルギー学部、先端マテリアル研究開発協創機構内のものづくりに関する設備や体制を整えました。導入予定の積層造形装置3Dプリンターは、試作品を多品種少量生産で効率よく作ることができ、地域でのものづくりの可能性が広がります。素材は金属だけではなく、今後、化学物質や生体材料にも応用し、素材、材料をキーとした他学部への横展開も進めていきます。
本質的な課題としては、国立大学協会が声明を出したように、財政が非常に厳しいことです。国からの予算が少しずつ減り、下げ止まりになっていると同時に、物価上昇などで経費がかさんでいます。社会課題を解決する人材育成や研究を進めるには、大学の持続可能性を確保することが重要です。

―地方の国立大学としての意義をどう捉えていますか。
島根県は、少子高齢化や産業の縮小などといった地方の課題を抱えています。これらは日本全体だけでなく、将来、世界も直面する課題であり、解決策を示すことができれば、先導的な役割を果たすことができます。
これまで、文系、理系、医学系の学部がある総合大学として、県内の全ての分野、産業を支える人材を輩出しています。持続可能な社会とウェルビーイング(多様な幸福)の実現に向け、学部を超えた「知の融合」が可能になる仕掛けをつくりたいと考えています。

人間の営みが地球に影響を与え(人新世)、限界を超えつつある現在、科学界、政治・経済界にも正解はなく、SDGsなど世界が協力して道を探して実践するしかありません。
古い世代も全力を尽くしますが、若い世代の皆さんが主体となって考え、世界や地域の人々と触れて、一緒に真に持続可能な未来を切り開いていってください。
鳥取県八頭町出身(68歳)2024年4月に現職に就任。
京都大学医学部を卒業後、1995年に島根医科大学教授、2009年に島根大学医学教育担当副学長、11年に同大学医学部長、22年に同大学理事・副学長を歴任。趣味は音楽鑑賞(バッハなどクラシックから、ジャズ、ロック、ポップスなど広く)や絵画・美術鑑賞(セザンヌなど西洋美術 から、琳派、慶派など含む日本美術など広く)と読書
