厚生労働省は10日、保育所での新型コロナウイルス感染が広がっていることを受け、感染防止策を強化する方針を決めた。初の指針を年末までに策定する。休園すると保護者の仕事に支障が出ることから、保育所の事業継続に向けた対策も示す。今秋にも感染症の専門家や自治体担当者らによる検討会を設置し、実態調査も実施する。来年度から全国の保育所での指針活用を目指す。
感染力の強いインド由来の「デルタ株」が広がる中、園児や保育士らがコロナに感染した保育所は全国で累計3500カ所以上(5日時点)に上り、休園も相次ぐ。幼い子どもの世話をするため「3密(密閉、密集、密接)」になりやすく集団感染のリスクが高い。
国は、高齢者の死亡が相次いだ介護施設に関しては、既存の手引を3月に更新し、コロナ対策も盛り込んだ。一方、当初は子どもは重症化しづらいとされていたことなどから、保育所については指針は作らず対策は現場に委ねていた。感染急拡大を受け、重い腰を上げた形だ。ただ、実態把握や課題の整理が必要なため、運用開始まで時間がかかるとしている。
厚労省は感染対策の現状を把握するため、民間業者に委託し保育事業者への聞き取り調査も行う。有識者検討会での議論や調査結果を踏まえて、感染防止指針や保育士らの研修プログラムを年末までに作成する。
また、感染者が出て休園すると、子どもの預け先がなくなり保護者が仕事を休まざるを得ないことが課題となっている。厚労省は感染防止指針と同様に、検討会や保育所へのアンケートを行い、開園し続けるための指針や事業継続計画(BCP)のひな型を作成する。