【短歌】安部 歌子選

君がくれた舶来煙草が引き出しに眠る机は二十歳の日のまま    出 雲 江角  謙

  【評】二十歳の日に君からプレゼントされた舶来煙草。そのまま大切に机の引き出しにしまったまま幾十年。君と作者にはどんな人生があったのだろう。さまざまなことを思わせる余韻の残る一首である。

娘ら去んで布団干したしが初雪の予報に積み置く部屋いっぱいに  江 津 岡本美津子

  【評】初雪の予報に布団を干せないままでいる作者。布団の事のみを詠(うた)いながら娘らと過ごした時間、去ったあとの...