「当たり前すぎて気付かない、いつでも、誰でも受けられる医療」。日本医師会のホームページではこう強調されている。国民皆保険下で世界に誇る日本の医療は、未知の感染症によって有事に対応できない弱点があらわになり、崩壊の淵に追い込まれた。

逼迫の原因

 電話口の母の声は日に日にかすれ、苦しそうになった。「最悪の事態も頭をよぎった」。離れて暮らす長男(55)は、実家の両親を案じた10日間を振り返る。

 東京都内に住む母(76)が新型コロナウイルスの検査で陽性になったのは1月4日。昨年に胃の全摘手術をしたばかりの父(84)も続けて感染が発覚したが、病院はどこもいっぱいだった。

 数日後...