農相の辞表を提出するため首相官邸に入る江藤拓氏(中央)=21日午前
農相の辞表を提出するため首相官邸に入る江藤拓氏(中央)=21日午前

 「米」という漢字の成り立ちには諸説ある。その一つが、米を作るのに「八十八もの手間がかかるから」という説。「米」の字を分解すると「八」「十」「八」になる。今は機械化が進み手間は減ったものの、肥料や燃料、人件費などが上昇。生産者には別の苦労がのしかかっている。

 そんな苦労を理解していれば、不適切な発言はできなかったはずだ。「コメは買ったことはない。支援者の方々がたくさん下さるので、家の食品庫に売るほどある」と発言した江藤拓農相=衆院宮崎2区=が混乱を招いた責任を取って閣僚を辞任した。事実上の更迭だ。

 昨秋からのコメ価格高騰が収まらない中、ようやく今年3月に政府備蓄米の放出を開始。ところが店頭にはほとんど出回らず、消費者の怒りは頂点に達している。そこに今回の発言。生産者を愚弄(ぐろう)するばかりか、消費者の苦労も見えていない。

 問題発言は自民党佐賀県連の政治資金パーティーで飛び出した。問題を指摘され「受けを狙って強めに言ってしまった」などと釈明したが、受けるどころか周囲をあきれさせただけで笑えない。

 「米」の読み方の語源には「込(籠(こ))める」という言葉から来たという説のほか、穀物の小さい粒を「小実(こみ)」「小目(こめ)」と言い、転じて「コメ」と読まれるようになったとの説もあるそうだ。生産者や消費者の苦労が分からない政治家は「小粒」と言われても仕方ないだろう。(健)