山陰中央新報社の島根政経懇話会の定例会が22日、松江市内であった。慶応大教授の渡辺靖氏(58)が「トランプ2・0時代の世界情勢と日米関係」と題して講演した。要旨は次の通り。
トランプ大統領が就任し半年がたったが、彼にとっては素晴らしい半年間だったのではないか。主要な株価が史上最高値を更新したほか、ガソリン価格は4年ぶりの低水準となり、関税交渉は落ち着いてきた。
2期目はブレーキ役が不在となり、トランプ氏の意向が反映されやすくなっている。1期目を踏まえた後悔や焦りもあるだろう。
不法越境者を減らしながら、多様性・公平性・包括性(DEI)の推進を問題視し、報道や専門家に圧力をかけている。イランの核施設攻撃を機にイラン、イスラエルの停戦合意に向けて働きかけ、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国の防衛費負担増などを要求してきた。こうした権威主義的な手法から、民主主義の破壊者に見える一方、ワシントンのエリートによる社会の支配を変える救済者とも受け取られている。
今後は障壁が出てくる。議会は上下両院ともに与党共和党が多数派とはいえ、いずれもわずかな差だ。2026年秋の中間選挙では、米実業家イーロン・マスク氏の新党設立などによる与党への向かい風で、停滞する可能性もある。
対日政策では、貿易赤字や防衛費、集団的自衛権などで米国に頼り過ぎてはいないかと、不公平感の是正を求めてくるだろう。東南アジア諸国連合(ASEAN)や欧州にネットワークを拡充し、リスクヘッジしていくことが重要だ。
23日は、米子境港政経クラブ定例会が米子市内であった。
(黒崎真依)