永井利治氏
永井利治氏

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が3、4の両日、浜田、益田両市であり、共同通信社論説委員長の永井利治氏(61)が「石破政権と2025年の経済展望」と題して講演した。要旨は以下の通り。

 10月の衆院選で少数与党となった石破政権は国内外で多くの問題に直面する。政治資金規正法の改正案を巡って企業・団体献金の禁止を求める野党と対立しており、刷新感を出すのが難しい。与党の自民、公明両党、衆院選で躍進した国民民主党の「3党体制」の構築を進めるにしても、国民が求める所得税の「103万円の壁」引き上げの協議がうまくまとまらなければ若年層を中心に票を集めた国民の失速も免れない。

 来年1月に始動する米国のトランプ政権との付き合い方も懸念だ。紛争が続くパレスチナ自治区ガザではイスラエルへの軍事支援に偏重する米国の姿勢は他国から反発を呼んでいる。石破政権は日米同盟を強める中で注視が必要だ。

 トランプ次期大統領は不法移民や麻薬流入の対抗措置としてメキシコとカナダからの輸入品に対する25%関税のほか、中国に10%の追加関税を表明した。諸外国と交渉の際に関税を使い交渉を進めるのが特徴で、日本も今後何を施されるか分からない。日米関係をどうコントロールするか、模索する必要がある。

 石破政権が経済成長を見据えて支援する半導体産業は注目したい。シリコンウエハーなどの材料は日本が世界シェアの6~7割を占める。米国や欧州連合(EU)でも半導体の生産投資や研究開発に対する補助金ラッシュが進み、共同通信社による日本国内の世論調査でも半導体支援を評価する声が大きい。国の補助金ありきではなく、工夫して民間に増資させる手立ても求められる。

 日本は低成長からの脱却が課題だ。石破政権が一定の賃上げや減税を行い、どれだけ国民に豊かさの実感や消費拡大をもたらすことができるか。政権にとって来年の大きなチャレンジだろう。(宮廻裕樹)