6月23日は「慰霊の日」である。80年前のこの日、沖縄戦で日本軍による組織的戦闘が終わったとされる。しかし、その戦争は終わったのか。目取真俊「セミの声」(「新沖縄文学」96号)は、こうした問いとともに沖縄戦の記憶を突きつける。

弱い者が犠牲に

 主人公の大城は、山原と呼ばれる沖縄北部の生まれ。中学生の時に沖縄戦を経験、敗戦後に新制高校を卒業、外国語...