小学校の対面授業=5月、大阪市内
小学校の対面授業=5月、大阪市内

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないまま、多くの学校で8月末から夏休みが明ける。政府は一斉休校を要請せず、状況が悪化する東京都や大阪府でもこれまで通り新学期が始まる見通しだが、教員らは「児童生徒の安全を守れるのか」と対策に不安を抱える。秋の運動会や文化祭などの行事を実施できるかどうかも悩みの種だ。

 「夏休みに入り、生徒や保護者が感染したとの報告が急激に増えた」。緊急事態宣言の期間が延長された大阪府。公立中の40代男性教諭は「このまま授業が再開すれば、学校でクラスター(感染者集団)が発生するのではないか」と懸念する。

 生徒に手洗いやマスク着用を再三指導するが、全員への徹底は難しい。教室を換気し、机の距離を離すなど「できることに限りがあり、対策を強化する余地が見当たらない」と感じる。

 感染力の強いインド由来のデルタ株が拡大し、子どもたちにも広まる。それでも文部科学省は20日、「休校は学習や心身への影響が大きい。極力避けるべきだ」と改めて全国に通知。デルタ株にも有効な従来の感染防止策を徹底するようチェックリストを示したほか、小中学校に簡易検査キットを配布する対策を追加し難局をしのぐ方針だ。

▼状況は「災害級」

 東京都の現在の感染状況は「災害級」(小池百合子知事)とも例えられるが、新学期を前に都教育委員会が各学校に出した通知はこれまでの対策内容にとどまり、休校や強制的な分散登校には踏み込まなかった。

 昨年の一斉休校の経験を踏まえ、保護者や学習の進捗(しんちょく)などへの影響を考慮し「まずは一つ一つの対策を積み重ねていく」との考えを示す都幹部。18日の都教委臨時会では、委員から「従来の対策徹底は当然で登校人数を半分にするなど覚悟を持って臨むべきだ」との厳しい意見も出た。

▼行事の見直しも

 秋にかけて学校行事が盛んになる。東京都渋谷区立笹塚小では9月下旬に運動会を予定するが、荒木憲秀校長は「感染状況の悪化が続けば、内容の見直しは避けられない」と警戒感を強める。

 5、6年生が全員参加する鼓笛隊は、笛やハーモニカの演奏が飛沫(ひまつ)感染につながる恐れがあるとされ、練習が全くできていない。保護者の観覧を制限する対策も検討せざるを得ないという。

 笹塚小は休校を余儀なくされる事態を想定し、児童全員に配備したパソコンを授業で積極的に活用してきた。今春には児童の自宅と学校をウェブ会議システムでつなぐ双方向授業を試験的に行い、通信トラブルなど課題を洗い出した。夏休み中は児童の習熟度を高めるため、自宅に端末を持ち帰ってもらった。

 自治体の中には既に修学旅行の延期を求める動きがある。荒木校長は「最悪の状況でも授業はオンラインで継続できる。ただ、対面ならではの学びがあり、学校行事は何とか実施する道を模索したい」と話した。