大会の見どころについて話す松尾倫男社長(左)と小林浩美会長=東京都内
大会の見どころについて話す松尾倫男社長(左)と小林浩美会長=東京都内

 ステップ・アップ・ツアー「山陰ご縁むす美レディース」の開幕を控え、主催者である日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の小林浩美会長と、今年から共催者として大会を支える山陰中央新報社の松尾倫男社長(大会会長)が大会の意義や狙いについて対談した。

日本女子プロゴルフ協会 小林 浩美会長/世界で勝つ選手育てたい
山陰中央新報社 松尾 倫男社長(大会会長)/山陰開催の灯 絶やさない

 松尾 東京五輪での稲見萌寧選手の銀メダル獲得、おめでとうございます。稲見選手をはじめ、2019年の全英女子オープンで優勝した渋野日向子選手、山陰ご縁むす美レディースの前身の大会を制した勝みなみ、比嘉真美子両選手など、ステップアップツアーから国内のトッププロ、世界へと羽ばたいた選手が少なくありません。同ツアーの意義や狙いを話してください。

 小林 選手の育成強化を目的に1991年に始め、2012年からは世界ランキングの対象とするため、大会日程を順次2日間から3日間に延ばしました。渋野選手は全英女子オープン優勝後、世界ランキングが14位にアップしましたが、ステップアップツアー時代から積み重ねたポイントがベースになっています。さらに、2日間大会の時代は予選落ちがなく、1打にしびれたり、重みを感じきれない面がありました。3日間大会になり、予選を通過しないと決勝ラウンドに進めず、緊張感が増しました。スポンサーの皆さまにご理解をいただいて、賞金も増え、選手のモチベーション、成長の糧となっています。同時に、衛星放送での生中継が始まり、全国のファンに訴求できるようにもなりました。

 松尾 パットを入れたら優勝という場面で、きっちりと決めるには基礎体力はもちろん、精神力が必要ですよね。舞台が大きくなればなるほど、重要さは増します。現在の女子ゴルフの隆盛、選手の活躍はJLPGAを挙げた取り組みの成果ですね。ステップアップツアーのコースセッティングも、世界をにらんでいると聞きました。

 小林 コースによって異なりますが、攻めた選手が勝つ環境、土壌づくりを意識しています。60台を続けて出し、特に最終日の後半にスコアを伸ばせないと、世界で戦えません。残り100ヤード以内であれば、ピンの1メートル以内に寄せ、パットをしっかり決める力がないと勝てません。そういった環境で戦い、力を養ってきたからこそ、稲見選手は東京五輪でも後半追い上げました。私たちにとって、銀メダルは「最高」ではなく、「当然」であり、むしろ「惜しかった」という感じです。取り組んできたさまざまな改革が実を結んだと喜んでいます。

 松尾 それにしても、今年の全米女子オープンを制した笹生優花選手や、男子のマスターズ大会で優勝した松山英樹選手を含め、若手の日本人選手の活躍は目覚ましいですね。メジャー大会でも物おじしません。小林会長が米女子ツアーに参戦されていた頃と、何か違いがありますか。

 小林 インターネットの影響が大きいですね。世界中の動きが瞬時に知ることができるようになり、ジュニアの選手が「タイガー・ウッズのようになりたい」などと言うようになりました。私たちの世代は国内に目が向き、そういう発想の人はいませんでした。今はアマチュア時代から世界に目を向け、成長しようと努力、切磋琢磨(せっさたくま)しています。

 松尾 近年、女子ゴルフが人気を集めているのは、単なる強さだけでなく、スポンサーやファンへのホスピタリティーを重視されていることも理由ではないでしょうか。規則とモラルを守り、同じ組で回る人を気遣いながらプレーするゴルフは人間教育、社会人教育の上でも有用と考えます。プロアマ大会で接した選手は皆さん、礼儀正しく、親切で、ゴルフの魅力、良さを体現されていますね。

 小林 ルールブックの最初に書いてあるのが、エチケットとマナーの大切さです。新人研修では専門家を招き、レセプションでのお皿への料理の盛り付け方、名刺の渡し方、化粧のやり方、会員制交流サイト(SNS)の注意点など、社会人としてのマナーも徹底的に教えます。さらに、毎年の選手ミーティングでも「私たちの職業はどうして成り立っているのか」という視点で、ファンやスポンサーの皆さんに「感謝し、最高のパフォーマンスを見せる」ことが私たちの使命であることを確認しています。

 松尾 いよいよ開幕する山陰ご縁むす美レディースは、山陰地方で開かれる唯一の女子ツアー大会です。その灯を絶やすことなく、間近で、ゴルフの魅力を存分に楽しんでもらおうと、共催することにしました。コロナ禍を踏まえ、残念ながら無観客となりましたが、選手の皆さんには大山平原ゴルフクラブという素晴らしいコースで、大会キャッチフレーズにもある「感動と元気」を発信していただきたいと思います。松江市出身で、6月のプロテストで合格したばかりの浜崎未来選手の活躍も期待しています。

 小林 全国でのゴルフの普及こそが、日本女子プロゴルフ協会の存在意義であり、山陰地方でツアーを存続していただき、感謝しています。大山平原ゴルフクラブは様々なショットの技術が求められ、選手の実力を測る上で良いコースです。その上、グリーンなどの状態が良く、日頃のメンテナンスへのこだわりがよく分かります。コロナ対策のガイドラインに沿って感染予防に努めるとともに、こういう状況下で私たちを受け入れてくださった自治体やスポンサーの皆さんに感謝しながら大会を開催し、成功させたいと思います。選手も従来に増して「ありがたさ」を感じています。ひたむきな姿を山陰中央新報の紙面やテレビ、ネットを通して届けますので、ぜひ応援してください。