7月にアメリカ南部テキサス州で発生した大規模洪水では、隣国メキシコから捜索に駆け付けた救助隊員たちがいた。両国の間には、不法移民問題を巡る摩擦がある。隊員の中には、不法移民の摘発を推し進めるアメリカのトランプ大統領への嫌悪感を押し殺しながら「互助に国境はない」との思いで捜索に貢献した人もいた。ある隊員は、日本での経験が力になったと明かす。私が取材を通じて救助隊と親しくなる中、隊員から虎刈りにされた「断髪式」についても報告する。(年齢は取材当時 共同通信ロサンゼルス支局長 井上浩志)

 ▽きっかけは1本の電話

 そもそも、なぜメキシコの救助隊がテキサスに向かったのか。きっかけとなったのは、メキシコ北部コアウイラ州シウダアクニャに拠点を置く非営利団体「911財団」だ。911番は、メキ...