すみれ(蒼井優)、キム・ヨンギ(イ・ジュニョン)=映画『TOKYOタクシー』場面カット(C)2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会
すみれ(蒼井優)、キム・ヨンギ(イ・ジュニョン)=映画『TOKYOタクシー』場面カット(C)2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会

 山田洋次監督の91本目となる最新作『TOKYOタクシー』が、11月21日に公開される。このたび、終活に向かうマダム・高野すみれ(倍賞千恵子)と、タクシー運転手・宇佐美浩二(木村拓哉)の“たった1日の旅”の中で語られる「すみれの過去」を映し出した場面写真6点が解禁された。

【画像】映画『TOKYOタクシー』そのほかの場面カット

 本作は、フランス映画『パリタクシー』のリメイク作品で、山田組のスタッフが再結集。『男はつらいよ』や『キネマの神様』で知られる山田監督が、移ろいゆく大都市・東京を舞台に、人生の喜びを謳い上げる物語を紡ぐ。

 出演は、山田作品に欠かせない倍賞に加え、『武士の一分』以来19年ぶりの山田組参加となる木村。若き日のすみれを蒼井優が演じる。

 タクシー運転手の宇佐美浩二は、ある日85歳の高野すみれを東京・柴又から、神奈川の葉山にある高齢者施設まで送ることになった。人生の終盤を迎えたすみれは、「東京の見納めに、いくつか寄ってみたいところがある」と浩二に頼み、幼少期から現在まで人生のターニングポイントとなった思い出の場所を寄り道することに。タクシーで旅を共にするうち次第に心を許したすみれは、初対面の浩二に、喜びと悲しみを織り交ぜた壮絶な人生を語り始める。そんな“たった1日の旅”が偶然出会った二人の心、そして人生を大きく動かしていく――。

 解禁となったのは浩二とのたった1日の旅の中でも語られる、すみれの人生の一幕を写し出した場面写真。10代の頃に経験した運命の出会い、初恋相手との燃えるような恋と別れ、20代の苦悩に満ちた結婚生活など、激動の時代を生きたすみれの人生が垣間見える。

 初恋の相手キム・ヨンギ(イ・ジュニョン)と熱い視線を交わしながらダンスを踊るカットは、彼女の人生で最も幸福な時間の一つを捉えている。そして、後の結婚相手となる小川毅(迫田孝也)と親密な眼差しを交わす一枚は、人生の新たな章への期待を感じさせる。

 しかし、結婚後の二人が見つめ合うカットと、小川が硬い表情で視線を飛ばすカットからは、後々の悲劇の始まりを告げるかのような不穏な緊張感が漂い、家族に忍び寄る影と、それに抗おうとするすみれの葛藤が伝わる。

 そんなすみれが、裁判所の証言台に毅然とした表情で佇む姿も写し出され、すみれの人生を大きく変えることとなる“事件”が浩二との旅の中でどのように語られるのかにも注目だ。

 さらに苦難に直面しながらも懸命に生きるすみれの幸せを誰よりも願う母・信子(神野三鈴)の姿も映し出したカットも。家族の絆と、母から娘へと受け継がれる無償の愛、そして人生の厳しい現実を描き出す山田監督らしい人情味あふれる物語に期待が高まる。

 倍賞、木村と共に本作を支える蒼井は、『おとうと』(2010年)、『東京家族』(13年)、『家族はつらいよ』(16年)、『家族はつらいよ2』(17年)、『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』(18年)に続き、6度目の山田作品への出演となった。蒼井は撮影後の打ち上げで「リテイクないですか?」と尋ねるほど、山田組の現場を離れることを惜しんでいたという。

 主演の倍賞とは『ホノカアボーイ』(09年)以来、16年ぶりの共演となる蒼井は、「今回、倍賞さんと同じ役をやらせていただけると聞いたとき、夢のように思いました」と語り、胸を躍らせて撮影に臨んだという。山田監督が長年信頼を寄せる倍賞と、若き日のすみれを演じる蒼井の二人を通して、ひとりの女性の人生がどのように浮かび上がるのかに注目が集まる。