講演する服藤恵三氏∥松江市朝日町、エクセルホテル東急
講演する服藤恵三氏∥松江市朝日町、エクセルホテル東急

 山陰中央新報社の島根政経懇話会の定例会が11日、松江市内であった。医学博士で最高検察庁参与の服藤(はらふじ)恵三氏(68)が「科学捜査と捜査支援~回顧と展望」と題して講演した。要旨は以下の通り。

 大学を卒業し、民間企業を経て1981年に警視庁の科学捜査研究所の研究員になった。昼夜を問わず捜査に邁進(まいしん)する現場の刑事たちが好きだった。自身も役に立とうと勉強を重ね、薬毒物に関する研究で医学博士を取得した。

 95年3月、オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件では、捜査員が築地駅の車両の床面から拭き取ってきたサンプルを鑑定し、サリンだと特定した。不特定多数の人間を標的にする組織があること、そこにサリンを作れる人間がいることに非常に驚いた。

 その後、警視庁に新設された「科学捜査官」になり、98年の和歌山毒物混入カレー事件など多くの事件捜査に当たった。2000年代には、志願して警察署で捜査の第一線に出た。現場の捜査員の捜査手法を目の当たりにし、スピード感のある捜査支援の必要性を強く認識した。犯罪捜査支援室長に就き、地図やデータベースを使いやすくしたほか、画像解析などへの最新技術導入に力を入れた。

 2019年の退官後も、捜査支援に携わっている。生成人工知能(AI)の登場で犯罪は飛躍的に高度化した。有名人の短い映像を集めて学習させると、用意した文言を声も動きも本物そっくりに話す動画が作成できる。

 交流サイト(SNS)の普及により犯罪者と被害者がつながりやすくなっているのに加え、犯罪者同士の接点も生まれている。

 生成AIなど新しい技術が次々と出て、警察と検察だけでは捜査が難しくなっている。犯罪グループ側が先を行き、捜査側が追い付くと、さらに新しい手で来る。いたちごっこだ。官民一体となって最新技術を常に研究し、悪に対抗していかないと、とても追い付かない時代が来ている。

 12日は、米子境港政経クラブ定例会が米子市内であった。(新藤正春)