スーパーの食料品売り場で、視界の中に店員の姿はなかった。「もしかしたら、誰も見ていないかもしれない」。ふと、そんな考えが頭をよぎり、心を支配していく。見つかれば、家族との平穏な時間をまた失う。そう分かってはいるのに、気持ちにあらがえず、手が伸びていく。商品をかばんに入れ、そのまま店を出たところで、店員に呼び止められた。

 50代の高橋香織(たかはし・かおり)(仮名)は、福島市にある福島刑務支所に服役中の受刑者だ。万引を重ねて初めて刑務所に...