ケーブルテレビで集団接種完了を報告する自治体の放送を見る住民=島根県邑南町内
ケーブルテレビで集団接種完了を報告する自治体の放送を見る住民=島根県邑南町内

 山陰両県で新型コロナウイルスワクチンの接種をおおかた終えた町村が事業の閉じ方に苦慮している。接種希望者の確実な把握や有効期限があるワクチンの管理が難しいため。受けないつもりだった人が感染急拡大で心変わりする可能性もあり、体制を縮小しつつ、近隣自治体と共同で「駆け込み接種」に備えるなど接種の場の維持に腐心する。 (取材班)

 

 山陰両県の市町村は、人口の多い市部が集団接種と個別接種を併用。町村部は集団接種のみの例が多い。

 島根県邑南町は14日、計画した集団接種を終了。石橋良治町長が町内のケーブルテレビで「町民と接種業務に関わる皆さんのおかげだ」と、事実上の接種完了宣言をした。

 町は7月15日から64歳以下の一般接種を始め、働き盛りの世代が接種しやすいよう、午後8時半までの遅い時間も対応。地元企業を通じて働きかけ、多い日には700人に接種し対象9504人中、2回目終了は8014人(接種率84・3%)に上った。ただ、未接種の町民向けに接種案内は続ける。希望者がいれば接種の場を検討する。

 接種事業の閉じ方に悩む町村は少なくない。

 9月下旬に集団接種の終了を見通す同県海士町はその後、西ノ島町や知夫村と合同で隠岐島前病院(西ノ島町)に接種の場を設ける方針。集団接種日に来られなかったり、接種希望に気持ちが変わったりした人のほか、本年度中に接種対象の12歳になる子どもの対応などが必要なためだ。

 島民の85・9%が2回目接種を終えた知夫村の崎博一村民福祉課長でさえ「これで終わり、とは言い切れない」と明かす。約半年しかないワクチンの有効期限も考慮すべき課題。長期間ストックできず、他の自治体からの融通で追加接種に対応するつもりだ。

 個別接種で対応してきた同県美郷町も悩みは同じ。9月末~10月上旬をめどにおおむね完了見通しだが、学校行事との兼ね合いで追加接種を望む声もあり、近隣自治体との連携など機会の確保策を検討中だ。

 島根県の担当者は、終了の目安は対象者の8割が済ませるか、予約が入らなくなった時だとみるが「定義は難しい。『おおむね終了』までしか言えないだろう」と話す。

 一方、人口が多い都市部は接種完了までまだ遠い。

 鳥取市は10月末~11月上旬がめど。ワクチン不足で中断していた職域接種が再び動きだすなど好材料があり、市保健所保健医療課の稲田すなお参事は「前倒しの可能性はある」とみる。

 島根県では25日、一日の感染者としては過去2番目に多い45人の感染が発表された。デルタ株が猛威を振るう中、接種希望者が増える可能性があり、18万人余りの対象者を抱える松江市の担当者は「(完了は)現時点で見通せていない」と述べるにとどめた。