第六章・天に抛(なげう)つ(36)

 

(縁談が決まった時、永は八つだった)

 利長は永の言葉に記憶を呼び覚ました。つい昨日のことのようだが、あれから三十三年もたったのである。

 利長は膝を進めて点(て)前(まえ)畳に座...