今年、発生から20年を迎える“今市事件”こと、栃木小1女児殺害事件。2005年末に下校中の女児が誘拐されて殺害された凶悪事件だが、捜査は難航した。ようやく容疑者の男が逮捕されたのは、およそ8年後の2014年のことだ。だが犯行を示す直接証拠はなく、当初から「冤罪ではないか」と疑問視する声が根強くあった。さらに男の裁判では、違法な取り調べの存在も明らかになった。結局、無期懲役が確定したものの、男は今でも獄中から冤罪を訴え続けているという。その事実を知った私たちは、真相を求めて事件をたどりなおすことにした。(共同通信=武田惇志、片山歩)

 

 ▽複数の目撃証言

 2005年12月1日午後2時15分ごろ。栃木県今市市(現・日光市)で、大沢小1年の吉田有希ちゃん(7)が友達と下校を始めた。その日は木曜日で、1年生だけ4時限目で授業を終え、帰宅する日だった。

 午後2時40分ごろ、小学校近くの三叉路で友達3人と別れた。付近は雑木林が生い茂り、人通りが少ないエリア。寒々とした通学路だった。

 午後5時ごろ、有希ちゃんが帰宅していないことに母親が気づき、駐在所に捜索...