修学旅行で森鴎外記念館を訪れた松江市立本庄中学校の生徒=島根県津和野町町田
修学旅行で森鴎外記念館を訪れた松江市立本庄中学校の生徒=島根県津和野町町田

 小中学校の修学旅行で、中四国各県から山陰両県を訪れる例が増え続ける。新型コロナウイルスの影響で近場に目が向き、感染者が少ない両県が選ばれる流れは変わらず、特に島根県では2021年度の関連助成制度の利用が19年度の5倍に上る。観光関係者は団体客が減る中、修学旅行の増加を歓迎。コロナ禍収束後に本格的に売り込もうと描く。 (佐貫公哉)

 日本修学旅行協会によると、コロナ禍以前は、全国的に修学旅行先は東京や沖縄、北海道に人気が集中。山陰両県が選ばれることはあまりなかった。

 コロナ禍となってからの人気はデータが物語る。修学旅行を企画する旅行会社向けに設けた島根県観光連盟の修学旅行助成制度の利用はコロナ禍前の2019年度に20件だったのが、20年度は35件。21年度は8月26日時点の見込みで103件と、19年度の5倍に増えた。鳥取県観光戦略課によると、鳥取は総数に目立った増加はないが、広島、山口など近隣の学校が占める割合が増えた。

 松江城(松江市)、出雲大社(出雲市)、水木しげるロード(境港市)といった代表的な観光スポットが集まった中海・宍道湖圏域は、とりわけ人気が高い。

 フジトラベルサービス広島支店の宮口英樹営業課長は「授業でも学ぶような歴史的なスポットがまとめて楽しめる」と説く。例年だと関西に出掛けていた広島県坂町の小学校に提案したプランは、島根県東部と鳥取県西部を1泊2日で楽しむバス旅行だという。

 松江城山公園管理事務所によると、松江城への修学旅行は、関東、中部地方など遠方から年に数校ほどだったのが、島根、鳥取をはじめ山口、香川など広く中四国地方からも訪れるようになった。今秋は予約申し込みが8月26日時点で54件。黒川貴子副所長は「これほど松江城を選んでもらえたのは驚き」と話す。

 水木ロードも散歩や買い物が楽しめる観光スポットとして好評。境港観光協会の福留康次課長は「一般の団体客がめっきり減った中、ありがたい」と喜ぶ。

 この機会に山陰の魅力を知ってもらい、コロナ収束後も再び修学旅行先に選んでもらうPRの戦略も求められる。鳥取県観光戦略課の青砥聡係長は「モデルコースやプランの県外向けの説明会に、コロナ収束後は再び積極的に取り組みたい」と展望した。