公立大学法人島根県立大学
異文化の認識の違いをユーモラスに描く落語をバイリンガルで披露


桂三輝さん、島根県立大学浜田キャンパス大講義室2にて、講演

令和7年 10月24日(金)、島根県立大学浜田キャンパスにおいて、カナダ人の落語家である桂三輝さんが国際関係学部国際コミュニケーションコースの学生に対して「Gaining Global Recognition: How to Promote Japanese Culture Outside of Japan」と題して、英語と日本語による講義を行いました。

桂三輝さんの落語のユニークな特徴は"funny cultural gap"に注目するところです。最初に丁寧さについての「まくら」、落語のイントロがありました。「日本語には感謝の表現がとても多く、47種類もある。丁寧になればなるほど長くなる。ところが、英語では「ありがとう」に当たる表現はそんなに多くない。日本語で一番ぞんざいな感謝の表現が、英語の『サンキュー』だった」という桂三輝さんの話に会場は笑いに包まれました。

島根県立大学に来る前までブロードウェイで公演をしていた桂三輝さんは、「幸せなら手を叩こう」を丁寧な日本語の替え歌をまるでミュージカルスターのように歌い、聴衆にタイミングよく手を叩くことを促し、聴衆を惹きつけました。

落語は聴衆の想像力を利用して場面を作る芸術であることを、桂三輝さんは落語で使われるジェスチャーを使って説明しました。落語はたった1人で複数の人物を表現します。その演じ分けにはジェスチャーが役立ちます。家の中にいる人を演じる時は、右側を見る。一方、外から来る人を演じる時は、左側を見る。なぜか。それは江戸時代の歌舞伎の花道が舞台から見て右側にあったから。左を向くことや右を向くことの意味が、劇場の構造に由来していることを明かし、聴衆はジェスチャーの意味の深さに興味をそそられました。

桂三輝さん、大喜びの聴衆に囲まれて

国際コミュニケーションコース3年の大槻穂乃佳さんは「日本語で感謝を表す時、丁寧になればなるほど長い文章になることや、日本人は略して短く言うことが多い、という点が普段、日本語を使う日本人には気づかないことが面白かったです」と認識を新たにしました。

国際コミュニケーションコース4年の福井沙紀さんは「母国語じゃない言語で笑いを取れるようになるのは、ものすごい努力をされたんだと思います。日本人なら絶対知っている歌を歌ったり、丁寧語やタメ語を駆使して、90分があっという間でした」と言葉を自在に操る桂三輝さんの能力に尊敬の念を表しました。

桂三輝さんはカナダのトロント大学で古典ギリシア喜劇を専攻し、劇作家として活躍していましたが、古典ギリシアの演劇と日本の伝統芸能に共通点があることに興味を持ち、日本にやってきました。言葉の力だけで、観客の想像力を掻き立て、全く別の世界を作ることができる落語に魅了され、桂三輝さんは落語家になることを決心しました。桂三枝(現・文枝)師匠の元で3年間修行し、異文化の認識の違いから生じる笑いという落語の新しい領域を切り拓き、カナダ、アメリカ、イギリスなど世界各国で、英語、フランス語、日本語を駆使して日本の伝統芸能である落語を世界に発信しています。

国際コミュニケーションコースの江口真理子教授は「日本文化を世界に発信する上で外国語と非言語を効果的に使う能力がこれからますます重要になっていく。桂三輝さんはインドで公演するためにヒンディー語も勉強している。本学の学生にもぜひ見習ってほしい」とグローバル化した社会での外国語能力の重要性を指摘しました。
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