第八章・寛永の危機(25)

 

 一陣の風が頭上を吹き抜け、野田山をおおった木々の梢(こずえ)をざわめかせた。利常はしばらく風の音に耳をすまし、波立つ心を鎮めてから墓所を後にしたのだった。

 五月...