北朝鮮が新型とする長距離巡航ミサイルを発射、さらに15日には日本海に向けて弾道ミサイルとみられる2発を発射し、挑戦的な姿勢を見せ続けている。一連の発射は、14日に東京で日本、米国、韓国の北朝鮮担当高官協議が行われたタイミングを狙ったものだろう。

 しかし戦略兵器の開発に集中するのではなく、米国との対話に乗り出すことが、国連制裁、新型コロナウイルス対策のための貿易遮断、そして洪水など自然災害にあえぐ経済的苦境から北朝鮮が脱する生き残りのための唯一の選択だ。

 15日に日本海に向けて発射された弾道ミサイルについて日本政府は同日夜、当初の発表を変更し、いずれも石川県・能登半島沖の舳倉島(へぐらじま)から北約300キロの日本の排他的経済水域(EEZ)に落下したとの推定を明らかにした。

 北朝鮮の弾道ミサイル発射は3月25日以来で半年ぶり。日本のEEZへの落下は2019年10月以来。変則軌道で約750キロ飛行し、最高高度は約50キロだったとみられるという。変則軌道で迎撃をかわす新型短距離弾道ミサイル「KN23」の改良型との見方がある。

 一方、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は同じ日、中部忠清南道(チュンチョンナンドウ)泰安(テアン)の実験場で潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射実験を視察した。実験は成功し、米ロ中英仏印に続き実戦配備に移る。東アジアの軍拡競争のエスカレートが懸念される。

 北朝鮮は、先に発射した長距離巡航ミサイルについて「自国領空に設定した楕円(だえん)と8の字形の軌道に沿い、2時間6分20秒にわたり1500キロ飛行し、標的に命中した」としている。

 この通りだとすれば、日本をほぼ射程に収めることになる。巡航ミサイルは弾道ミサイルと異なり、特定の標的に向け攻撃を加えるものだ。しかも低空で軌道を変えながら長時間飛行するため、探知や迎撃が難しい。

 北朝鮮の発表では、弾頭重量は明示されていないが、核弾頭の小型化に成功しているとすれば、核付きの巡航ミサイルということになる。

 朝鮮半島有事の際に支援を受け持つ在日米軍基地や自衛隊基地も安泰ではないという警告が込められている。北朝鮮のミサイル開発に対応するため、これまで日本は弾道ミサイルに主眼を置いた防衛体制を講じてきたが、今後は変速軌道で飛んでくる巡航ミサイルへの対処も必要となる。

 北朝鮮は日米韓高官協議でも再確認された「前提条件なしの対話」提案に対し、一連のミサイル発射で応えた。つまりは、米国が敵視政策の放棄を行動で示せ、ということだろう。

 北朝鮮の主張する「対話の環境づくり」には国連の経済制裁の緩和が含まれているとみられる。しかし非核化への行動を見せない限り制裁緩和は無理だ。

 むしろ北朝鮮は、非核化に逆行する動きを見せている。国際原子力機関(IAEA)は8月末、北朝鮮が寧辺(ニョンビョン)の核施設を再稼働させている兆候があると指摘した。再処理施設の稼働などが確認されたという。

 制裁緩和を実現するには、非核化に踏み込む具体的な措置がなければならない。そして、非核化措置を政治的に評価する米国との外交対話が必要だ。「前提条件なしの対話」を呼び掛ける米国に、北朝鮮はミサイル発射ではなく、対話への意思を示すことで応えるべきだ。