短歌 丸山恵子選

お互いに片方は杖空いた手を握りしめつつ友を見送る       松 江 土井 郁子

 【評】身体を支える杖であろう。空いた手を塞(ふさ)ぐと安定性に欠けた状態となるが、深く信頼し合っている二人は互いが支えとなっている。物理的な支えだけでなく精神的な支えでもあるのでは。感情を表す言葉を使わず、むしろ多くが伝わる。

五十年のご愛顧感謝の貼り紙に冬陽差しをりケーキ屋仕舞ふ    松 江 森脇よし子

 【評】四句が詩情を生んでいる。冬の陽は柔らかく寒さの中で温かみを感じさせる。ケーキ屋は近隣の人々にとってそのような存在であったの...