弾む声が聞こえるようなメールが届いた。昨年12月の小欄で取り上げた切り絵の絵本『きせきのやしのみ』の作者、亀山永子さん(52)からだ。愛知県在住の亀山さんは、太平洋戦争末期に戦死した出雲市の男性がフィリピンから流したヤシの実が、31年後に故郷の漁港に漂着して家族の元に渡った実話を基に5年前に絵本を作った。
関心のある人に回覧板のようにつなげて読んでもらえたらと、表紙裏に読んだ日や名前、感想を書く31人分の欄を設け、計50冊を全国に配布する取り組みを昨年始めた。
「1冊でも自分の元に絵本が帰ってきたら、それは奇跡」と話していた亀山さん。メールは、最後に“旅に出た”50冊目が先月初旬に、知人を通じて島根を旅していた1冊がその後に戻ってきた、という知らせだった。2冊とも感想がびっしりと書かれていたそうだ。
さらに島根を巡った1冊は、返送した31番目の人が「ぜひ友達につなぎたい」と同じ絵本に新たな記入欄を貼り付け、2周目の旅が始まるという。絵本の魅力はもちろんのこと、デジタル社会の現代で何ともアナログな取り組みが、より多くの人の心を動かしたのではないか。
戦地から故郷へ帰りたいと願った男性の思いは、ヤシの実に乗り、平和を希求する亀山さんの絵本に載って多くの人の心に刻まれている。だから何事も諦めることはない。少しずつでも時間をかけてでも、思いは届く。(衣)














