食品の値上げが止まらない。需要増による原材料や輸送コストの上昇など複数の要因が重なったためで、10月以降はパンをはじめ値上げする商品がさらに広がる見通しだ。新型コロナウイルス禍で収入が減った非正規雇用などの家計には一層の打撃となる。消費活動だけでなく景気全体へ悪影響が及びかねず、動向を軽視すべきではない。

 価格上昇の足元の動きを象徴している一つが食用油だ。日清オイリオグループは、家庭用食用油を11月納品分から1キログラム当たり30円以上引き上げると発表した。同社をはじめ食用油大手の値上げは実に今年4回目となる。

 原因は大豆や菜種、パーム油など原料の高騰だ。その背景にはコロナ禍からいち早く回復した中国での需要増や、世界的な脱炭素の取り組みによるバイオ燃料での利用拡大などがある。

 関連する加工品の値上がりにつながっているのが小麦の価格上昇だ。中国における家畜飼料用の需要増や北米での作柄悪化、海上輸送費の増加などが響き、農林水産省による売り渡し価格は2021年10月期(10月~22年3月)に前期比19%と2期連続で上がる。

 既にパスタが上がったりパンや菓子類の値上げが発表されたりしているが、当面、同様の動きは収まらないとみられる。

 このほかコーヒーや冷凍食品、マヨネーズにも値上げの波が及ぶ。8月の天候不順でレタスなど一部の野菜も高い。要因は異なるものの増税に伴い10月から、たばこが値上げされる。

 注意すべきなのは、これらの動向が消費者物価指数には目立って表れない点である。8月の総合指数は前年同月比で0・4%下落と11カ月連続のマイナスになった。これは相次ぐ携帯電話料金の引き下げが全体に響いているためで、「生鮮食品を除く食料」は0・3%の上昇だった。

 食品価格上昇の影響は全ての家計に及ぶが、所得の低い世帯ほど負担感が大きい。厚生労働省の調査によると7月の給与総額は一般労働者が前年同月比でプラスだったのに対して、パート労働者は0・9%の減少だった。特に残業代に当たる所定外給与が落ち込んでおり、コロナ禍による飲食業の営業短縮などが影響したとみられる。食品の値上がりはこのような家計を直撃している。

 これは単に家計の問題ではない。価格高騰が買い控えを招き、小売業や消費関連産業へも悪影響が波及するからだ。既にそれを見越した企業の動きが出ている。

 イオンは、プライベートブランド(PB)の主力食料品約3千品目の価格を年内は据え置くと発表した。PBは小売り側の意向を反映しやすく、値上げによる消費者離れを防ぐ狙いがある。ほかの流通大手も同様の対応を取る見通しで、家計の一助となろう。

 米中の景気回復に伴う価格上昇の影響は食品だけでなく、半導体や木材、鉄鋼などに幅広く及んでいる。最近では、日本製鉄によるトヨタ自動車向け鋼材価格が、1トン当たり2万円程度の大幅値上げで決着した。

 企業にとっては、原材料コストの上昇を最終価格に転嫁できなければ、利益を減らすことになる。今回の広範な価格高騰の動きが家計、企業の双方に重荷となり、コロナ禍から抜け出せない国内景気を下押しするリスクに注意を払いたい。