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原発に向き合う・島根2号機再稼働 逃げることはできるのか(4)要支援者対応道半ば 個別避難計画策定進まず 同乗・協力者確保も課題

「施設を陽圧化してほしい」。社会福祉法人ふれあい(松江市野原町)の平野勝己理事長(78)が昨年11月、松江市に対し、建物内の気圧を上げて外気の侵入を防ぐ「陽圧装置」の設置を求めた。  同法人は野原町内で軽費老人ホームと特別養護老人ホームを運営。入所者は事故発生時に松江市から180キロ以上離れた岡山県内へ避難するが、計約140人のうち90人は寝たきりか車椅子で生活しており、長距離移動で体調を崩す可能性が高い。混乱の中で避難車両に同乗する職員を確保できる保証はなく、平野理事長は「避難が逆効果になる」と不安視する。  中国電力島根原発(同市鹿島町片句)が立地する松江市は2017年度までに、屋内退避ができるよう島根原発の10キロ圏内にある高齢者施設や障害者施設など16施設と、医療機関3施設で陽圧化の工事を実施。設置にかかった計49億3700万円は全額、国の補助制度を活用した。  一方、ふれあいが運営する2施設は島根原発から約11キロ離れていることや鉄骨造りの構造などを理由に、補助制度の対象外。市が14年3月に策定した広域避難計画で、5~30キロ圏内(UPZ)の市民は事故発生から1週間程度のうちに避難すると定める。   ▼対象者5万7000人  自力での避難が困難な「要支援者」は島根原発のUPZ内に約5万7千人いる。

原発に向き合う・島根2号機再稼働 逃げることはできるのか(3)広域避難の壁高く 要支援者対応道半ば バス確保も運転手不足深刻 事業者の実態把握必要

島根県が中国電力島根原発(松江市鹿島町片句)の事故時に県外にも避難する広域避難計画を策定してから7年後。2019年11月に県などが実施した原子力防災訓練で、松江市美保関地区、出雲市大津地区の住民がそれぞれバスに乗り込んだ。広島、岡山両県のバスが原発から5~30キロ圏内の住民を初めて県外の避難先に運んだ。 [関連記事] ・訓練 無意味だったんじゃないか 能登地震でリスク露呈 <原発に向き合う>  地元だけでは不足する避難所を補うため、松江、出雲、安来、雲南4市の27万960人が広島、岡山両県内への避難を想定。移動手段としてバスは大きな役割を担う。ただ、優先的に対応する地元事業者のバスだけでは足りず、島根県は17年に中国5県のバス協会と緊急輸送協定を締結した。  「必要とされる台数は確保している」。島根県原子力防災対策室の神村好信室長は強調する。同室によると、毎年、各県のバス協会に保有台数を聞き取り調査し、必要台数1079台に対し、23年8月は計5884台となった。    島根県内の事業者向けには1台当たり3万~5万円を助成する事業を22年度に創設。県旅客自動車協会を通じて県内37事業者に助成し、22年度に計1182万円、23年度に計1252万円の県費を投じて車両の確保を図る。  研修会で基礎知識  協定提携前、各協会は原発事故で放出される放射性物質による運転手の被ばくを懸念し、「基礎的な知識が知りたい」との声が上がった。  懸念を受け、