「施設を陽圧化してほしい」。社会福祉法人ふれあい(松江市野原町)の平野勝己理事長(78)が昨年11月、松江市に対し、建物内の気圧を上げて外気の侵入を防ぐ「陽圧装置」の設置を求めた。
同法人は野原町内で軽費老人ホームと特別養護老人ホームを運営。入所者は事故発生時に松江市から180キロ以上離れた岡山県内へ避難するが、計約140人のうち90人は寝たきりか車椅子で生活しており、長距離移動で体調を崩す可能性が高い。混乱の中で避難車両に同乗する職員を確保できる保証はなく、平野理事長は「避難が逆効果になる」と不安視する。
中国電力島根原発(同市鹿島町片句)が立地する松江市は2017年度までに、屋内退避ができるよう島根原発の10キロ圏内にある高齢者施設や障害者施設など16施設と、医療機関3施設で陽圧化の工事を実施。設置にかかった計49億3700万円は全額、国の補助制度を活用した。
一方、ふれあいが運営する2施設は島根原発から約11キロ離れていることや鉄骨造りの構造などを理由に、補助制度の対象外。市が14年3月に策定した広域避難計画で、5~30キロ圏内(UPZ)の市民は事故発生から1週間程度のうちに避難すると定める。
▼対象者5万7000人
自力での避難が困難な「要支援者」は島根原発のUPZ内に約5万7千人いる。...