島根県が中国電力島根原発(松江市鹿島町片句)の事故時に県外にも避難する広域避難計画を策定してから7年後。2019年11月に県などが実施した原子力防災訓練で、松江市美保関地区、出雲市大津地区の住民がそれぞれバスに乗り込んだ。広島、岡山両県のバスが原発から5~30キロ圏内の住民を初めて県外の避難先に運んだ。

[関連記事]
訓練 無意味だったんじゃないか 能登地震でリスク露呈 <原発に向き合う>

 地元だけでは不足する避難所を補うため、松江、出雲、安来、雲南4市の27万960人が広島、岡山両県内への避難を想定。移動手段としてバスは大きな役割を担う。ただ、優先的に対応する地元事業者のバスだけでは足りず、島根県は17年に中国5県のバス協会と緊急輸送協定を締結した。

 「必要とされる台数は確保している」。島根県原子力防災対策室の神村好信室長は強調する。同室によると、毎年、各県のバス協会に保有台数を聞き取り調査し、必要台数1079台に対し、23年8月は計5884台となった。

 

 島根県内の事業者向けには1台当たり3万~5万円を助成する事業を22年度に創設。県旅客自動車協会を通じて県内37事業者に助成し、22年度に計1182万円、23年度に計1252万円の県費を投じて車両の確保を図る。

 研修会で基礎知識

 協定提携前、各協会は原発事故で放出される放射性物質による運転手の被ばくを懸念し、「基礎的な知識が知りたい」との声が上がった。

 懸念を受け、...